研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)の細胞嗜好性を明確にするために,T細胞株HPB-Ma細胞と肝細胞株HuH7のそれぞれに感染可能なHCV量の測定系を確立した。その結果,血中のHCVは全て肝細胞への感染能を有したが,リンパ球への感染能は個々の患者で異なっていることが明らかになった。つまり多くの患者は,肝細胞とリンパ球の双方に感染できるHCVが存在し,一部の患者で肝細胞だけに特異的なHCVのみが存在したが、リンパ球だけに特異的なHCVのみの患者は存在しなかった。インターフェロン療法の治療効果と細胞嗜好性の関係を検討した結果,肝細胞ではなくリンパ球への感染能が深く関係することが明らかとなり,肝細胞とリンパ球の双方に嗜好性を有するHCVの存在がインターフェロン治療抵抗性を決定する要因であった(投稿準備中)。 Envelope領域のアミノ酸配列が細胞嗜好性を決定する可能性を考えて,71名の患者(1b 36名,2a/2b35名)に関してE2領域のアミノ酸配列をPCRで増幅した後にdirect sequence法で決定した。その結果,抗体が結合していないフリービリオンが多い1b症例では個々の症例間で共通性が認められなかったが,フリービリオンが少ない1b症例とフリービリオンの量に関係無く2a/2b症例の間で共通性のあるアミノ酸配列を認めた(J Med Virol 印刷中)。 これら結果を踏まえて,フリービリオン量と関係する可能性が高いEnvelop構造の検討を始めた。今後は,細胞嗜好性とフリービリオン量の調節に関与する構造を明らかにして,ウイルス量の制御へと研究を進める予定である。
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