研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)のインターフェロン療法の治療効果が,血中ウイルスの中でリンパ球系細胞株HPB-Maへの結合量が重要な決定因子であることを152名のprospective studyで決定した(J Hepatology)。次にHCVは抗体が結合することにより感染力を失っていくので,抗体が結合していないHCV(antibody-free virion)量を測定し,更に38名(genotype 1b 22名,2a/2b 16名)の患者血清中HCVのEnvelope 2のHypervariable region領域を決定した。その結果,Hypervariable regionに関して,antibody-free virionが多い1b症例では個々の症例間で共通性が認められなかったが,antibody-free virionが少ない1b症例とantibody-free virionの量に関係無く2a/2b症例の間で共通性のあるアミノ酸配列(コンセンサス配列)を認めた(J Med Virol)。 細胞嗜好性を検討するためT細胞株HPB-Ma細胞以外に肝細胞株HuH7に結合するHCV量の測定系を確立した。その結果,多くの患者のHCVは肝細胞とリンパ球の双方に感染できたが,一部の患者のHCVは肝細胞だけにしか感染できなかった。リンパ球だけにしか感染できないHCVは存在しなかった。インターフェロン治療効果とは,肝細胞系細胞への細胞嗜好性を有するHCV量は関係無く,肝細胞とリンパ球の双方に嗜好性を有するHCV量がインターフェロン治療抵抗性を決定した(2000年肝臓学会総会発表)。現在これら嗜好性の異なるHCVのE2領域のアミノ酸配列を決定中であり,今後antibody-free virionの解析で得られたコンセンサス配列と比較検討を行い,リンパ球への感染防御抗体の解析を行う予定である。
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