研究課題/領域番号 |
11670515
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中尾 一彦 長崎大学, 保健管理センター, 講師 (00264218)
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研究分担者 |
中田 恵輔 長崎大学, 医学部, 助教授 (40217740)
石井 伸子 長崎大学, 保健管理センター, 教授 (20088868)
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キーワード | ウイルス性肝炎 / インターフェロン / インターロイキン-1β / p48 / ISGF3 / ゲラニルゲラニルアセトン |
研究概要 |
インターフェロン(IFN-α、β)はウイルス性肝炎の治療薬として広く用いられているが、その効果にはは限界がある。我々は、IFN-α、βのシグナル分子であるSTAT1,STAT2、p48、に着目し、これらのシグナル分子の発現や活性を高めることで(Modulation)、IFN-α、βの抗ウイルス作用を増強できるのではないかと考え実験を行った。まず、B型肝炎ウイルス(HBV)のエンハンサー1領域にSTAT1、STAT2、p48の複合体からなる転写因子ISGF3が結合するISRE配列が存在していることを見いだしたので、その意義について検討を行った。その結果、IFN-αにより誘導されるISGF3はISRE配列に結合し、エンハンサー1転写活性を抑制することが明らかとなった。さらに、この抑制効果はインターロイキン-1β(IL-1β)の併用、並びにISGF3の構成分子であるp48遺伝子導入により著明に増強されることが解った。IL-1βとp48遺伝子導入はIFN-α、βで誘導される抗ウイルス蛋白PKRの発現も増強したが、その機序として、IL-1βはIFN-αによるSTAT1のリン酸化の程度を強めることで、p48遺伝子導入はIFN-αによるISGF3の形成を促進することでIFN-αの細胞内シグナルを増強していることが明らかとなった。一方、抗潰瘍薬であるゲラニルゲラニルアセトン(セルベックス)は非環式レチノイドと類似の構造を持ち、ヒートショック蛋白などの遺伝子発現を誘導する事が知られている。ゲラニルゲラニルアセトンを肝癌培養細胞に添加するとSTAT1、STAT2、p48の発現の誘導、並びにSTAT1のリン酸化が起き、それに伴い転写因子ISGF3の形成、抗ウイルス蛋白PKR、25-OASの発現が誘導されることが明らかとなった。 本研究の結果、IL-1β、p48の遺伝子導入、ゲラニルゲラニルアセトンなどがIFN-αの細胞内シグナルを増強しうることが示唆され、ウイルス性肝炎治療の新しい可能性が示された。
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