研究概要 |
ヒトαフェトプロテイン(AFP)遺伝子プロモーター(pAF0.3)上流にヒト血管内皮増殖因子遺伝子上流のHypoxia responsive element(HRE)を挿入した[HRE]AF0.3プロモーターを作製し、転写活性を検討した。AFPを中等度生産するヒト肝癌細胞PLC/PRF/5では[HRE]AF0.3転写活性は低酸素下にてAF0.3の5倍に増強されたが、非肝癌細胞HeLaにおいてはいずれのプロモーターも転写活性を認めなかった。 これらのプロモーターを単純ヘルペスウイルスチミジンカイナーゼ遺伝子上流に挿入したレトロウイルスを作製、PLC/PRF/5およびHeLa細胞に感染後、G418耐性の遺伝子導入細胞(PLC/AFTK,PLC,/[HRE]AFTK,HeLa/AFTK,HeLa/[HRE]AFTK)を確立しガンシクロビル(GCV)の抗腫瘍効果を検討した。(1)in vitroにおいては、PLC/[HRE]AFTKの増殖を50%抑制するGCV濃度は3.4ug/mlであったが、PLC/AFTK,HeLa/AFTK,HeLa/[HRE]AFTKではいずれも100ug/ml以上であった。(2)in vitroにおいてはPLC/AFTKまたはPLC/[HRE]AFTKをヌードマウスの皮下に接種し腫瘍を形成させた後、GCV(50mg/kg)の腹腔内投与を行ったところ、PLC/[HRE]AFTKによる腫瘍は消失した。 AFPプロモーター上流にHREを挿入することで、肝癌特異性を失うことなく転写活性が増強された。今後はAFP産生量の異なる肝癌細胞やHeLa以外の非肝癌細胞を用いて、その肝癌細胞特異的な転写活性増強をさらに検討する予定である。
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