研究概要 |
1.Barrett腺癌における硫酸化糖鎖SO3-Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcとマトリライシンの発現を免疫組織学的に調べると,硫酸化糖鎖は癌組織にdiffuseに発現し,matrilysinは浸潤先進部に強く発現していた。シアル酸化糖鎖の発現頻度は低く,matrilysinとの関連は観察されなかった。 2.E-selectinは硫酸化糖鎖の発現例の血管内皮に発現する傾向が見られ,シアル酸化糖鎖とは関連がなかった.しかしE-selectinは硫酸化糖鎖非発現例でも炎症細胞浸潤の強い部分で見られ,両者に有為な相関は得られなかった。そこで対象検体を進行癌の転移リンパ節に絞って検討するとE-selectinと硫酸化糖鎖,両者の発現は一致する傾向があった. 3.新鮮切除標本の得られた1例での検討ではカゼインザイモグラプィーによりMatrilysinの移動度から活性型matrilysinの占める割合が多かった. 4.硫酸化糖鎖陽性Barrett癌ならびにシアル酸化糖鎖陽性胃幽門部癌からゲルろ過/超遠心/アフィニティクロマトグラフィによりsulfomucinならびにsialomucin分画を得た. 5.Dual determinant enzyme immunoassay法ではcatcher抗体の反応性が不良のためImmunoblot法により,core peptideの検出を試みた. 6.Sialomucin分画には抗MUC2抗体が結合したが,sulfomucin分画にはMUC1,MUC2,MUC3,MUC5AC,MUC6ならびにA3D4に対する抗体では反応性は認められなかった. 7.Barrett食道にmethylene blue染色を施行し,80倍の拡大内視鏡検査によりそのpit patternを5型に分類した. 8.免疫組織学的検討でpit 1,2,3型には硫酸化糖鎖は存在せず,pit4ならびにpit5型に硫酸化糖鎖が発現しており,これらは病理組織学的には特殊円柱上皮であった. 9.Barrett dysplasiaのpitは4型で,Barrett癌のpitはいづれにも分類できない不整な構造を示した.
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