平成11年度の検討では、以下のことを明らかにした。 1)エタノールによる肝芽種細胞HepG2のTGF-α発現誘導の解析 エタノール代謝能を有するヒト肝芽腫由来HepG2細胞の培養液中に100mMエタノールを添加して7日間培養した後、培養上清を回収するとともに細胞を洗浄・可溶化しRNAを調整し、Western blotおよびNorthern blot解析を行った。培養上清中の蛋白は、10%TCAで沈殿させた後、SDS-PAGE用sample bufferで可溶化した。その結果、エタノール存在下に培養すると、TGF-α蛋白およびmRNAの発現が約3倍増加することが明らかとなった。また、その培養上清中に増加したTGF-αは、ラットから分離した初代stellate cellのproliferationおよびtype I collagen mRNAの発現を増加させることも明らかにした。 2)アルコール性肝障害患者の肝組織におけるTGF-α発現解析 アルコール性肝障害患者からインフォームドコンセントを得た後、肝生検を施行しパラフィン切片を作製し、抗TGF-α抗体を用いて免疫組織染色を行った。対照として、ウイルス性肝疾患患者の肝組織を用いた。その結果、アルコール性肝線維症および肝硬変において、TGF-αの肝細胞における発現が著明に増加していることを確認した。引き続き、TGF-α mRNAおよび遺伝子発現調節におよぼすエタノールの影響を検討している。
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