研究概要 |
アルコール性肝疾患では、組織の炎症,細胞壊死や炎症浸潤を伴わずに肝線維化が出現することが特徴とされているが、その成立機序は不明であった.我々はこれまで、エタノールに暴露された肝細胞よりTGF-αが分泌され、それが星細胞の活性化を引き起こす現象を見出していた。本研究では、エタノールによるTGF-α遺伝子発現調節機構について検討した。まず、ヒトTGF-α遺伝子のプロモーター領域(-215〜-209)に存在するNF-kB様配列に着目し,NF-kBがエタノールによるTGF-α遺伝子の誘導に関与している可能性について検討した.その結果、エタノールにより,時間・容量依存性にNF-kBの結合活性は上昇することを明らかにした.またin vivoにおいてもTGF-α遺伝子はエタノールにより活性化され,NF-kB様配列に変異を導入すると,この活性化は消失したことからNF-kBがTGF-α遺伝子の誘導に関与していることが示唆された.この間のIkBの発現をHepG2細胞を用いて調べたところ、IkBの発現量はエタノール処理後早期に減少していたことから、IkBがリン酸化されてユビキチン化を受け、分解されるものと考えられた。さらにこの作用は抗酸化剤により抑制されたことから,エタノールは肝細胞内で代謝を受けて活性酸素を産生し,IKKの活性化、IkBの分解という過程を経て、NF-kBを活性化しTGF-α遺伝子を誘導する機構が考えられた。
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