研究概要 |
我々はまずHLA-A2もしくはHLA24を有する健常者とHCV陽性肝炎患者でそれぞれの末梢血から樹状細胞を誘導し、この樹状細胞を用いてペプチド特異的なCTLを誘導できるか比較検討した。性別、年齢をマッチさせた慢性肝炎患者6人、肝癌患者6人とコントロールとして健常者7人で比較検討した。健常者では7人中4人で、慢性肝炎患者では6人中5人でペプチド特異的なCTLを誘導できたが、肝癌患者では一人も誘導できなかった。この原因を追及するため、1)CTL誘導反応中に分泌されるサイトカインを検討したところCTL誘導群と非誘導群ではIFN-γの分泌量に有意差が認められたが、IL-12,IL-18,IL-4,IL-10,TGF-βには差は認めなかった。2)樹状細胞とCTLのシグナル伝達に関与する細胞表面分子の発現に差は認めなかった。3)HLA-A2、HLA-A24のgenotypeの検討では非誘導群の中にはHLA-AO201,HLA-A2402以外のgenotypeのものが多くgenotypeの情報が大切であることが分かった。ここまでの研究でペブチドを用いた免疫療法にはHLAのgenotypeとエピトープ情報が必要なことが分かり、応用にかなり制限があることが判明した。そこでHLA genotypeに関係なく抗原特異的CTLを誘導するために新たな遺伝子デリバリー方法として、生体内で酵素的に水と二酸化炭素に分解されるpoly(lactide-co-gIycolide)でmicropartideを作製しそのなかに腫瘍抗原を発現するベクターを包埋する方法を検討することとした。この形であればHLAやエピトープの情報が無くても誘導できることになる。研究期間内では樹状細胞内での抗原の発現と上清中にIFN-γの分泌が確認され新たな遺伝子デリバリーシステムとしての可能性が示唆され、現在CTLが誘導できるのか再現性を含め確認中である。本法はこのまま生体に投与したり予めDCに貪食させてから投与してもよく、人への応用が期待される有望な方法と考える.
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