研究概要 |
PCRを利用したDNAサブトラクション法を用いてラット活性化星細胞にプリオン遺伝子が発現することを見いだした.得られたcDNAフラグメントのシークエンスは既報のラットプリオン遺伝子の一部と100%一致していた.ノーザンブロット解析の結果,プリオンmRNAは静止期の星細胞には全く発現しておらず,活性化星細胞に限って発現していた.また,市販の抗プリオン抗体(これはPrP^CにもPrP^<SC>にも交差反応する)を用いて検討した結果,蛋白レベルでもプリオンは活性化星細胞のみに発現していた.一方、各種in vivo肝障害モデルを用いてプリオン遺伝子発現を検討した.急性肝細胞障害モデルとしては,四塩化炭素単回投与と胆管結紮モデル,肝線維化モデルとしては,四塩化炭素慢性投与とブタ血清による肝線維症モデルを用いた.各モデルにおいて,in situ hybridizationを行い,in vivo肝におけるプリオンmRNA発現とその局在を確認した結果、障害肝部や線維性隔壁に沿って.プリオン遺伝子および蛋白が発現することを見い出した。さらに肝生検で得たヒト肝組織におけるプリオン蛋白とそのmRNA発現を,正常肝,慢性肝炎(HBV,HCV,アルコールなど),肝硬変や自己免疫性肝炎別に免疫染色やin situ hybridizationで比較検討した.その結果、ヒトの肝臓でもプリオンが発現すること、発現は障害肝で増強し、炎症の程度と相関することが明かとなった。従って、プリオン蛋白は肝障害の新しいマーカーになる可能性がありさらに検討予定である。
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