研究概要 |
樹立化された再粘膜上皮細胞に対し、種々のサイトカイン・増殖因子刺激下において細胞内情報伝達系のひとつであるMAP kinasesの活性化およびその活性化経路ならびにPGの合成酵素であるCOX-2の発現とその伝達経路について検索した。H.pylori惹起性胃炎において関連するサイトカイン;IL-1β,TNF-α,IL-8刺激において、MAP kinasesの3系列であるERK,JNK,p38MAP kinaseは刺激早期の活性化を示し、その時相的経過に伴い、転写因子であるNF-κB,AP-1が活性化され、細胞増殖は一時的に抑制されることが明らかとなった。さらにその活性化経路にtyrosine kinaseならびにprotein kinase Cが関与していることも判明した。一方、細胞増殖を促すHGF刺激では、COX-1の発現には影響を与えず、COX-2遺伝子および蛋白レベルにおいても発現を増強させることが判明した。さらにその発現経路では、それぞれの酵素阻害剤を用いることからERKは関与するが、p38MAP kinaseは関与しないことが確認された。 以上のことから、細胞増殖に関連する刺激経路においては、種々の細胞内リン酸化酵素が密接に関連することが示され、その情報伝達経路内でのcross-talkあるいはswitchingのメカニズムを今後詳細に解析し、過剰増殖形質を得るガン化過程への阻害さらには積極的なアポトーシス過程への誘導メカニズムを検討する予定である。
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