研究概要 |
今年度は実験動物としてSD系雄性ラットを用い、コントロール健常ラットにおける各種マクロファージのサイトカイン産生能に及ぼすマクロファージ機能調整剤(プロスタグランジン誘導体EP-4)の影響について基礎的検討を行った。この際、生体内に近い実験条件を意識してエンドトキシン(Et)結合蛋白(Lipo-polysaccharide binding protein : LBP)存在下における検討を加えた。すなわち、1%ラット血清添加(LBP存在下)および無添加(LBP非存在下)の両条件下においてE Coliエンドトキシン(Et)100ng/mlで各種マクロファージを刺激し、3時間および6時間培養後の培養液中TNF-α濃度を測定したが、このEt刺激に先立ち、EP-4 0M,10^<-10>M,10^<-9>M,10^<-8>M,10^<-7>M存在下で1時間細胞を前培養することにより、EP-4の影響を検討した。Kupffer細胞では1%ラツト血清添加、無添加いずれの条件下でもLPS刺激時のTNF-α産生が10^<-9>M以上の濃度のEP-4添加により用量依存性に有意に抑制された。これに対し、肺胞マクロファージでは1%ラット血清添加、無添加いずれの条件下でもLPS刺激時のTNF-α産生はKupffer細胞より有意に多く、かつこれはEP-4添加により影響を受けなかった。また、脾マクロファージのTNF-α産生はKupffer細胞の場合よりはるかに少なかったが、EP-4は10^<-10>M以上の濃度でこれを有意に抑制した。今回、TNF-α産生能とEP-4の効果が一律でなかったのは、LPS刺激時のTNF-α産生機構がそれぞれのマクロファージで異なっていことに起因する可能性が示唆された。これに続いてチオアセタマイド6ケ月間投与肝硬変ラットについても同様の検討を行う予定であったが、肝硬変が進行し過ぎていたために十分量のKupffer細胞を採取できなかっ。そこで、アルブミン産生実験とともに来年度に肝硬変モデルでの実験をもちこすこととした。
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