研究概要 |
オステオポンチン(Osp)の遺伝子型がAllele AであるBalb/cマウスでは,Propionibacterium acnes(P.acnes)の加熱死菌を静注すると,1日後より肝におけるOsp mRNA発現が増強し,3日後に最大となった。このマウスでは,肝へのマクロファージ浸潤が1日後より認められるようになり,3日後には肉芽腫形成も生じ,これらの程度は5〜7日後にかけて最大となった。一方,遺伝子型がAllele BのC3H/HeJないしCBA/Jマウスでは,P.acnes死菌静注後の肝におけるOsp mRNAの発現増強は認められず,マクロファージ浸潤及び肉芽腫形成の程度も軽微であった。しかし,肝におけるMCP-1やMIP-1αのmRNA発現は,何れのAlleleのマウスでもP.acnes死菌投与後に高度となった。以上の成績より,マクロファージの肝浸潤に際して,Ospは各種chemokineの中で最も重要な役割を担っていることが判明した。現在はchemokine networkにおけるOspの位置付けを明らかにするためにin vitroの実験を推進している。ラットより単離したKupffer細胞や肝マクロファージにMCP-1やMIP-1αを添加して培養したが,Osp mRNAの発現には変化が認められなかった。Ospが他のchemokine発現に及ぼす影響や,マクロファージとともにOspを発現する肝星細胞におけるOsp発現調節機構を検討中である。 また,ヒト劇症肝炎症例における検討も開始した。広汎肝壊死の成立には活性化肝マクロファージの惹起する類洞内凝固が関与すると考えられているが,剖検肝を用いた免疫組織染色により劇症肝炎ではマクロファージにおけるOsp発現が著しく高度であることが明らかになった。劇症肝炎,特に急性型では血漿Osp濃度が高値であることも見出しており,一連の検討から広汎肝壊死の成立機序を解明するとともに,肝炎劇症化の予知法を確立できる可能性も浮上してきている。
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