研究概要 |
肝におけるosteopontin(Osp)の発現調節機構を検討し,以下の成果が得られた。 1)肝星細胞におけるOspのmRNA及び蛋白発現は,TGF-βの刺激により増強した。一方,IL-6,PDGF,FGF-2などのサイトカインやMCP-1,MIP-1αなどのケモカインはOsp発現に影響を与えなかった。従って,星細胞におけるOsp発現は,Smadを介する細胞内シグナルで調節されていることが明らかになった。 2)従来,肝細胞はOspを発現しないとされてきた。しかし,ヒト慢性肝疾患で免疫組織学的検討を行うと,肝細胞にも染色性が観察された。肝細胞における染色性は,慢性肝疾患の進展度と相関しておた。初代培養肝細胞を用いた検討により,肝細胞におけるOsp発現もTGF-βの刺激で増強することが判明した。 3)高分化肝細胞癌はOspを発現することを見出した。 以上より,Ospは広汎肝壊死のみならず,肝線維化や発癌の過程にも影響を与えている可能性がある。そこで,B6マウス由来のオステオポンチンcDNAを肝特異的なhuman serum amyloid P component(hSAP)プロモーターを有する発現ベクター(PLG1-hSAP)に入れたコンストラクトを作成し,これをB6受精卵にマイクロインジェクションすることでトランスジェニックマウスを作成した。F1をB6マウスと掛け合わせて,現在,ヘテロのF2を得ている。今後,更にホモの系を確立し,これを用いて肝壊死,線維化,再生及び発癌の病態連繋を検討する予定である。
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