研究概要 |
【方法】Wistar系雄性ラットを用い、Lieberらの方法により6週間エタノールのpair-feedingを行った。ラットに30分間の腸管虚血を行った後に再灌流し、60分後に生体顕微鏡下に肝表面の白血球膠着を観察し、6時間後に血清ALT活性を測定した。intercellular adhesion molecule(ICAM)-1の抗体を前投与し、同様の実験を行った。 【結果】コントロール群では、腸管虚血再灌流により膠着白血球(Untreated:2.3+/-0.6 per field;I/R:20.8+/-0.9)は増加し、血清ALT値も上昇した。慢性エタノール投与群では、I/Rによる中間域での白血球膠着(Control:12.1+/-0.6 per field;Ethanol:6.2+/-0.5)が抑制された一方で、終末肝静脈(THV)での白血球膠着を増強した(Control:4.0+/-0.6;Ethanol:13.0+/-0.7 per field)。また、慢性エタノール投与はI/Rにより惹起される血清ALT(Control:115+/-12 IU/l;Ethanol:263+/-48)値の上昇を増強した。ICAM-1の抗体の前投与により、慢性エタノール投与によるTHVでの白血球膠着増加、血清ALT値の上昇の増強作用は抑制された(THV;5.5±0.7,per field,ALT levels;149±12 IU/l)。 【結論】慢性エタノール投与は、腸管I/Rによる主に終末肝静脈でのICAM-1の発現を介して肝微小循環障害を増強し、その後の肝細胞障害も増強することが示唆された。
|