研究概要 |
1 B型慢性肝炎の急性増悪の前後で生じるHBVのpreC/C領域のアミノ酸変異とHLA class Iの相関 30例を対象として、血清中HBVDNAのコア領域のdirect sequenceとHLA class Iのtypingを行った。そして急性増悪前後でみられた、あるアミノ酸変化が生じる患者について、HLA class I typeを持つ患者と、そのHLAを持たない患者に分けて各々割合を算出し比較した。急性増悪前から増悪期にかけてのアミノ酸変化では、A26とaa49、Cw3とaa174に有意差が認められた。また増悪期から鎮静化の時期では、A2とaa27、A2とaa174、A11とaa97、A11とaa130、A26とaa59、A26とaa77、B61とaa27、B61とaa121、Cw1とaa26に有意な相関が認められた。上記の結果のうち、A2とaa27だけがこれまでの報告にあるclass Iモチーフのみで、その他のアミノ酸もCTLのエピトープである可能性がある。 2 HBs抗体陽性、HBVDNA陽性慢性肝炎におけるHBVの存続のメカニズム HBs抗原陽性のB型肝炎の経過観察中、HBs抗原のseroconversion(SC)を起こし、かつSC後もHBVDNAが検出された2例につき、SC前後のエンベロープ領域の塩基配列を比較した。さらに複製可能な形を持つ野生型HBVDNAの"a"-loopに変異を導入し、in vitro, in vivoで発現させ、HBIGやmonoclonal HBs抗体との反応性につき検討した。HBs抗原陽性時には2例とも"a"-loopはwild typeであったが、HBs抗原のSC後には、それぞれ3カ所ずつの"a"-loop領域の変異が出現し、そのほかには有意な変化はなかった。そこで"a"-loop変異株とHBs抗体との反応について野生株と変異株で比較したところ、まずin vitroでは、HBIG、polyclonalHBs抗体、"a"に対するmonoclonal抗体いずれを添加した場合も、培養上清中のHBs抗原の値が変異株で有意に高値を示した。HBVDNAを局注したマウスでも同様の結果を得た。
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