研究概要 |
1.劇症肝炎患者より採取した変異型B型肝炎ウイルスの生物学的特性 B型劇症肝炎患者より採取したDNAをPCR法で増幅したのちligationしてウイルスの全長を含むDNAを再構成したプラスミドを作成した。またこのプラスミド作成の際、HBVのDR部分を含む断片を重複させて有するようなデザインにして、in vitroで複製可能な性質を持たせた。このプラスミドをリポフェクチンとともにマウスの肝臓に局注したところ、マウスの肝細胞中で、HBs抗原、HBc抗原などを発現することがわかった。さらに、血中にHBs抗原を分泌した。さらにマウスの血液を経時的に調べるとHBs抗原からHBs抗体にセロコンバージョンすることがわかった。HBs抗体の産生は、マウスのstrainによって異なり、Balb/c(H-2K),C57/B6(H-2B)では高力価の抗体を産生したが、C3H(H-2D)では野生株のプラスミドを導入してもHBs抗体をほとんど産生しなかった。ところが、劇症肝炎患者由来の変異株から作成したコンストラクトをC3Hに局注すると、HBs抗体を産生した。このことから、劇症肝炎患者のHBVは、HBs抗原に関して、免疫原性が野生株と異なることがわかった。 2.HBVのgenotypeと急性肝炎の臨床像との関連 B型急性肝炎25例のHBV genotypeを調べたところ14例がgenotype A,5例がgenotype B,6例がgenotype Cであった。対照として行ったB型慢性肝炎症例での解析では、90%以上がgenotype Cであり、急性と慢性でgenotypeの分布が大きく異なった。判明した限りでは、本検討の急性肝炎の感染源は、ほとんどがsexual contactであった。Genotype Aの急性肝炎は、肝障害は激烈ではないものの、回復までに時間が長いという特徴があった。
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