研究代表者らは、HBs抗原陰性者におけるB型肝炎ウイルス血症として、まずHBs抗原陰性・HCV抗体陰性の肝細胞癌患者を対象として検討を行った。48例のHBs抗原陰性・HCV抗体陰性の肝細胞癌患者中、血清では41.7%、肝臓では88.2%でHBV-DNAが検出された。背景肝が正常肝の症例においては特に高レベルの発現が認められた(文献1)。また、HBs抗原陰性・HCV抗体陰性の新たな肝細胞癌12例を対象に肝内HBVmRNAの検出を行ったところ、検出される症例が存在し、肝内でウイルス遺伝子の転写が起こっていることが判明した。S領域及びX領域の遺伝子配列を検討したところ、遺伝子の欠失・挿入・置換など多様な変異が存在することが判明し、HBs抗原陰性となる一因と考えられた(文献2)。 また、HBs抗原陰性・HBc抗体陽性の献血者において血清HBV-DNAは3割前後の患者で検出されることが判明してきている。こうした例におけるHBV遺伝子の配列は肝癌の症例ほど多様ではなく、S抗原エピトープを含むmajor hydrophobic regionにも大きな変異は見られず、HBs抗原が陰性となる機序はウイルス量が少ないためと考えられた(投稿中)
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