本研究においては、C型肝炎ウイルス(HCV)による肝発癌の機構に絡んでいると推定されているHCVの非構造蛋白NS3の細胞への影響を調べるために、NS3と反応する宿主蛋白の検索を行った。酵母を用いた2-hybrid assay法によってヒトcDNAライブラリーから16種の陽性クローン(HCV-NS3結合活性を示唆する指標となる酵母増殖性及びβガラクトシダーゼ活性測定による検定法において)を得たが、その中にはRNAスプライシングに関わる蛋白SmDやDNAヘリカーゼのモチーフを有する蛋白等の細胞核に存在する蛋白が多くみられた。とくに活性の高いクローン7(SmD)及びクローン217(これまで配列が報告されてない未同定蛋白X)は大腸菌にてGST融合蛋白として作成し、in vivoでのHCV-NS3との結合の活性を調べた結果、それらの蛋白はin vitroでHCV-NS3と結合することが示された。またSmDについては、どの領域でNS3と結合するかを調べるために欠損ベクターを構築し、欠損SmD蛋白を調整した。解析の結果、SmDのカルボキシル末端側のGR(Gly-Arg)繰り返し配列領域がNS3結合域であることを明らかにした。HCVはvRNA、蛋白合成、ウイルス粒子形成等は細胞質で行うが、ある条件下では核蛋白と接触する機会があると考えられている。ここで述べたHCV-NS3とSmDとの結合が実際の細胞内で起こっているのか、またそれが細胞形質に及ぼす影響はどうか、等について検討していく必要がある。今後これらの蛋白及びHCV-NS3蛋白の発現ベクターを用いて、動物細胞に遺伝子導入を行い、それ自身の発現および発現に伴うp53を含めた他の蛋白の発現、機能に及ぼす影響等を解析していく。
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