研究概要 |
1.口腔扁平苔癬ならびに口腔癌組織からのHCV RNAの検出 【目的】C型肝炎ウイルス(HCV)は,肝臓だけでなく肝外病変として障害を引き起こす。口腔扁平苔癬(OLP)もその一つで,我々はこれらの口腔病変におけるHCV RNAの局在を検討した。【対象&方法】OLP組織19検体(HCV感染/非感染:14/5),口腔癌組織17検体(HCV感染/非感染:7/10),HCV-veのコントロール4検体,HCV+veのコントロール6検体に対して,組織における(+)鎖及び(-)鎖のHCV RNAをRT-PCR法によって検討した。さらにOLPと口腔癌組織各1検体について,HCV RNAのE1-E2領域の全アミノ酸配列を解析した。【結果】血清中のHCV RNA陽性者は,HCV感染のあるOLP組織14検体中13検体であった。OLP組織中の(+)鎖及び(-)鎖のHCV RNAの検出率は,各々92.9%(13/14),21.4%(3/14)であった。一方,口腔癌組織では,血清中のHCV RNA陽性者は7検体で,全例から(+)鎖のHCV RNAが検出された。(-)鎖のHCV RNAの検出率は,71.4%であった。OLPと口腔癌患者の各1名でHCV RNAのE1-E2領域の全アミノ酸配列を解析したところ,血清中と組織中ではアミノ酸配列が異なっていた。【結論】血清中と組織中で,異なるHCV RNAのアミノ酸配列が検出されたことは,組織からのHCV RNAの検出が,血液のコンタミネーションによるものではないことを証明している。したがって,今回得られた口腔組織における(-)鎖HCV RNAの検出は,HCVの口腔内における肝外増殖の可能性を示唆している。 2.口腔扁平苔癬とインターフェロン治療 -組織学的長期予後- 【目的】インターフェロン(IFN)療法後3年以上経過観察したOLPを対象に,その臨床経過や病変部位におけるHCV RNAの局在を検討した。【対象&方法】OLPを有するCH-C患者4例に対して経時的経過観察を行った。OLP組織所見の変化やOLP組織における(+)鎖及び(-)鎖のHCV RNAの消失をRT-PCR法によって検討した。【結果&結論】IFN療法が行われたOLP患者を長期に観察した結果,IFN療法を受けたOLP患者の中には,肉眼的所見だけでなく病理学的にも上皮下のリンパ球浸潤が軽度になり,改善する例のあることがわかった。すなわち,HCV RNAの駆除や肝障害の改善はOLPの改善にも関連している可能性がある。
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