研究概要 |
扁平苔癬とHCV-とくにHCV感染と杭カルジオリピン杭体 【目的と背景】HCVは,肝臓以外の肝外病変を引き起こし,最近ではHCV感染者に高率に抗カルジオリピン抗体(aCL)やクリオグロブリン(CG)が検出されることが知られるようになった。しかし,口腔扁平苔癬(OLP)とaCLを示す報告はなく,我々はHCV関連のOLP患者がどの程度のaCLを保有しているのかを検討した。【対象】対象は(1)OLPでHCV感染のあるもの(OLP-HCV+ve)28名(2)OLPでHCV感染のないもの(OLP-HCV-ve)22名(3)OLPを有さないでHCV感染のあるもの(non-OLP-HCV+ve)33名(4)OLPもHCV感染も有していないもの(control)50名の4グループ。各々の平均年齢ならびに性差に有意差はない(平均年齢,M/F;(1)66.1歳,10/18名(2)63.6歳,8/14(3)61.4歳,14/19(4)61.7歳,17/33)。【方法】血清中のaCL並びにCGについてELISA法で測定。【結果】グループ1〜4のaCLの検出率は,各々32.1%,18%,36.3%,8%であり,グループ1と3はcontrolよりも有意に高率に検出された。CGは各グループ共に有意差はなかった。【結論】HCV感染者には高率にaCLが検出された。aCL陽性に関わる因子はHCV感染であり,年齢,性別,OLPの存在には関連性を認めなかった。 HCV高感染地区のHCVキャリアを対象とした肝外病変の疫学調査-とくに口腔扁平苔癬 【目的と背景】我々は,以前にHCV高感染地区(福岡県H町)の住民検診を行ない,HCV感染者には非感染者よりも有意に口腔前癌病変が多いことや(Hepatol Res 1997),肝外病変の有病率が高いことを報告した(Gastroenterology 2000)。今回は他県でのHCV高感染地区(広島県O町)において口腔扁平苔癬(OLP)を初めとする肝外病変の疫学調査を行なった。【対象】O町のHCVキャリア59名(平均年齢70.7歳,M/F;21/38)。【方法】(1)口腔粘膜病変の診査(2)HCV抗体,HCV RNA, HCV genotype,抗核抗体(ANA),リウマチ因子(RF),抗SS-A, B抗体の測定(3)肝外病変の有無についての問診を行ない,検診結果については各住民に文書で報告。【結果】全員がHCV抗体陽性で,HCV RNA陽性者は57人,HCV genotypeは1b;45人(78.9%),2a;6人(10.5%),2b;5人(8.8%),1b+2b;1人(1.8%)。OLP有病率は8・5%(5/59)(2人がびらん型,3人が網状型)で,白板症は1.7%(1/59)に認められた。口腔乾燥症状を有する者は25.4%,自己抗体が少なくとも1つ以上陽性であった者は42.4%(25/59),肝外病変を認めた住民は66%(39/59)であった。【結論】今回の結果は,我々の研究結果が特定の地域(H町)に限られた現象ではないというこを実証した。
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