研究概要 |
平成十一年度より平成十三年度までinvivoの検討として56例の肝細胞癌組織を用いて肝細胞癌組織におけるAngiopoietin-1,Angiopoietin-2,およびそのレセプターであるTie-2の局在、癌部とその近接する非癌部肝組織での発現程度の違い、さらに、これらの発現程度と腫瘍分化度、血管新生との関係について検討した。その結果、9例を用いRT-PCRで検討を行ったAngiopoietin-1,Angiopoietin-2とTie-2の癌部と非癌部肝組織での発現程度の比較に関しては、Angiopoietin-1は9例の肝組織において癌部、非癌部肝組織いずれでも発現が認められたが、うち8例において癌部での発現が亢進していた。Angiopoietin-2は9例すべてにおいて癌部では強く発現されていたが、非癌部肝組織ではごく僅かにのみ発現を認めた。Tie-2に関しては癌部と非癌部肝組織での発現程度に差を認めなかった。また、47例を用い免疫組織学的に検討を行ったこれらの局在に関しては、Angiopoietin-1,Angiopoietin-2は共に肝癌細胞で最も強く発現され、その他内皮細胞や肝星細胞でも一部発現が認められた。Tie-2の発現は、内皮細胞と肝星細胞に認められた。同様に免疫組織学的に検討を行ったAngiopoietin-1とAngiopoietin-2の発現程度と腫瘍分化度の関係に関しては両者とも分化度が低くなるにつれて発現が増強したが特にAngiopoietin-2のほうが強い相関を示した。Angiopoietin-1とAngiopoietin-2の発現と血管新生の程度との関係についても腫瘍分化度の関係と同様にAngiopoietin-2のほうがより強い相関を示した。 一方、in vitroの検討としてAngiopoietin-1,Angiopoietin-2のcDNAを肝癌細胞に遺伝子導入し、これらの肝癌の血管新生に及ぼす影響を明らかにしょうと試みたが、レトロウイルスベクターを用いた検討において肝癌細胞への遺伝子導入がうまくいかず失敗に終わった。
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