3カ年計画の2年目にあたる平成12年度では、膵臓にのみSmad6を過剰発現させるためラットエラスターゼIのプロモーター領域と転写効率をあげるためのβグロビンイントロン領域を連結し、そこへsmad6の全域をコードするcDNAを結合させた。さらに翻訳効率をあげるためにsmad6のあとにポリ(A)領域もを連結させたプラスミドを完成させた。受精卵413個の対してマイクロインジェクションを行い、292個を仮親に移植した。28匹の産子が得られ、そのうち25匹が離乳まで至った。しかしながら、テールから抽出したDNAをもちいてPCRを行ったところ、すべてのマウスでsmad6のDNAを見い出すことは出来なかった。原因としては注入したDNAの精製が不良であることやプロモーターの不具合によること、smad6が致死的に働くことなどの可能性が考えられた。プロモーター領域をシークエンスしてみたが、理論的には問題がなかった。smad6を提供してもらった癌研の宮園浩平先生に問い合わせしてみたが、smad6が致死的に働くどうかについては、現在のところ不明であるとのことであった。明らかな原因は不明であったが、注入DNAの精製純度をあげて2度目のTgにトライすることにした。213個に対して注入を行い、203個の移植胚が得られ、最終的に59匹の産子が得られたばかりの状況である。前回の産子率は9.6%であったが今回は27.7%と向上が認められた。3月中旬には産子が離乳を迎えるため、その後にPCRを行う予定である。来年度中までにトランスジェニックマウス作製を確立して、マウスに膵炎を発症させて膵線維化の検討をしていく予定である。
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