難治性消化器がんに対するサイトカイン遺伝子を用いた免疫遺伝子治療と自殺遺伝子治療

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670556
• 研究機関: 千葉県がんセンター
• 研究代表者: 川村 希代子 千葉県がんセンター, 研究局・病理研究部, 主任研究員 (80260248)
• 研究分担者: 税所 宏光 千葉大学, 医学部・内科学第一講座, 教授 (10092058) ; 田川 雅敏 千葉県がんセンター, 研究局・病理研究部, 部長 (20171572)
• キーワード: 遺伝子治療 / サイトカイン遺伝子 / 自殺遺伝子 / レトロウイルス / IL-12 / IL-15 / IL-18 / HSV-TK

研究概要

(1)細胞性免疫を増強し効腫瘍効果を惹起するために、Th1タイプのヘルパーT細胞の活性化に関与するサイトカイン遺伝子を使用して、進行消化器がんに対する免疫遺伝子治療の可能性を検討した。そのため、(ア)Th1細胞への分化を誘導するサイトカインであるIL-12遺伝子,さらに新規サイトカインでTh1細胞より分泌されるIL-5遺伝子をRT-PCR法によりクローニングした。(イ)レトロウイルスを使用して、これらの遺伝子をヒト膵がん細胞AsPC-1細胞に発現させ、それぞれのサイトカイン産生細胞を各種免疫不全マウスに接種した。(ウ)その結果、これらの遺伝子導入によって、著しい抗腫瘍効果が惹起され、この抗腫瘍効果にはT細胞の関与が必須であることが判明した。また、IL-12による抗腫瘍効果には、顆粒球の関与が示唆され、IL-15については、natural killer細胞やγδT細胞もその抗腫瘍効果に関わっていることが、考えられた。しかし、従来の報告にあるような、血管新生に対する阻害効果はみられなかった。
(2)腫瘍に強く発現し、正常組織にはほとんどその発現を見ないミッドカイン遺伝子の転写調節領域を解析し、腫瘍特異的な遺伝子発現を目指した。その結果(ア)ヒト肝がん手術検体15症例中14例において、がん部のミッドカイン遺伝子が強発現を示し、非がん部では全く発現を認めなかった。(イ)レポーター遺伝子を利用して、ヒト膵がん細胞における転写活性化能を検討したところ、ミッドカイン5'上流側2.3kb領域にプロモーターが存在することが明らかになった。この転写活性化能はSV40T抗原のプロモーター活性より強力であることが判明している。肝がんのおける代表的なプロモーターであるアルファーフェトプロテインの転写領域と、プロモーター活性を今後比較検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Kimura M.,Saisho H.et al.: "Acquired immunity in nude mice induced by the expression of IL-2 or IL-4 gene in human pancreatic carcinoma cells and anti-tumor effect generated by in vivo gene transter using retrovirus"Int.J.Cancer. 82. 549-555 (1999)
• [文献書誌] Yoshida H.,Kawamura K.et al.: "Induced immunity by the expression of interleukin-2 or granulocyte macrophagecolony stimulating factor gene in murine neuroblastoma cells generated antitumor response for established tumors"Cancer Gene Ther.. 6. 395-401 (1999)
• [文献書誌] Tasaki K.,Kawamura K.et al.: "Protective immunity is induced in murine colon carcinoma cells by the expression of interleukin-12 or interleukin-18 which activate Th1-type helper T cells"Cancer Gene Ther.. 14(in press). (1999)
• [文献書誌] Tasaki K.,Tagawa M.et al.: "Transduction of murine colon carcinoma cells with interleukin-15 gene induces antitumor effect in immunocompetent and immunocompromised hosts"Cancer Gene Ther.. (in press).
• [文献書誌] Yoshida Y.,Saisho H.et al.: "Impaired tumorigenicity of human pancreatic cancer cells retrovially transduced with interleukin-12 or interleukin-15 gene"Cancer Gene Ther.. (in press).
• [文献書誌] kawamura K.,Tagawa M.et al.: "Expression of Escherichia coli uracil phosphoribosyltransferase gene in murine colocn carcinoma cells augments the antitumor effect of 5-fluorouracil and induces protective immunity"Cancer Gene Ther.. (in press).