1)手術時にカルチノイド腫瘍と病理診断された手術摘出腫瘍25腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋病理組織を材料として、5μm薄切病理標本を作成して、それぞれのタンパク質に対する特異抗体を用いた免疫組織化学法でRBおよびp16^<INK4A>(以下、p16)の発現異常を解析し、RB正常発現/p16正常発現、19腫瘍;RB正常発現/p16発現喪失、2腫瘍;RB発現喪失/p16正常発現、4腫瘍という結果を得た。2)肺癌病理診断のエキスパートであるCagle博士(米国Baylor医科大学病理学教室)に、手術時にカルチノイド腫瘍と病理診断された手術摘出腫瘍組織25腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋病理組織(5μm薄切病理標本)を送付し、病理組織診断のreviewを受けた。このreviewの結果、19腫瘍は定型的カルチノイド腫瘍と診断された。一方、残りの5腫瘍は非定型的カルチノイド腫瘍、1腫瘍はlarge cellneuroendocrine carcinoma(LCNEC)と診断された。3)全く独立に行なわれた、上記1)と2)の研究結果を合わせたところ、病理組織診断のreviewで定型的カルチノイド腫瘍と診断された19腫瘍のRBおよびp16の発現状況は、すべてRB正常発現/p16正常発現であった。一方、非定型的カルチノイド腫瘍と診断された5腫瘍においては、RB正常発現/p16発現喪失、2腫瘍;RB発現喪失/p16正常発現、3腫瘍という結果であった。また、LCNECと診断された1腫瘍は、RB発現喪失/p16正常発現を示した。4)以上から、細胞周期制御のp16:RB経路は、定型的カルチノイド腫瘍では正常に保たれており、一方、非定型的カルチノイド腫瘍ではRBまたはp16の発現喪失によって、すべての腫瘍で異常を来していることが明かになった。また、RBおよびp16の免疫組織化学染色は両腫瘍の鑑別診断上有用と考えられた。
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