1)手術時にカルチノイド腫瘍及び肺小細胞癌と病理診断された手術摘出腫瘍25腫瘍及び33腫瘍のホルマリン固定パラフィン包理病理組織を材料として、特異抗体を用いた免疫組織化学法でRBおよびp16^<INK4A>(p16)の発現異常を解析し、RB正常発現/p16正常発現、19腫瘍;RB正常発現/p16発現喪失、5腫瘍;RB発現喪失/p16正常発現、34腫瘍という結果を得た。2)肺癌病理診断のエキスパートであるCagle博士(米国Baylor医科大学病理学教室)に、上記の手術摘出腫瘍組織58腫瘍の病理組織を送付し、病理組織診断のreviewを受けた。このreviewの結果、19腫瘍は定型的カルチノイド腫瘍、5腫瘍は非定型的カルチノイド腫瘍、7腫瘍はlarge cellneuroendocrine carcinoma(LCNEC)、27腫瘍は肺小細胞癌と診断された。3)全く独立に行なわれた、上記1)と2)の研究結果を合わせたところ、病理組織診断のreviewで定型的カルチノイド腫瘍と診断された19腫瘍のRBおよびp16の発現は、すべてRB正常発現/p16正常発現でった。一方、非定型的カルチノイド腫瘍と診断された5腫瘍では、RB正常発現/p16発現喪失、2腫瘍;RB発現喪失/p16正常発現、3腫瘍であった。また、LCNECと診断された7腫瘍は、RB正常発現/p16発現喪失、3腫瘍;RB発現喪失/p16正常発現、4腫瘍を示した。肺小細胞癌と診断された27腫瘍は、すべてRB発現喪失/p16正常発現を示した。4)以上から、細胞周期制御のp16:RB経路は、定型的カルチノイド腫瘍では正常に保たれており、一方、非定型的カルチノイド腫瘍及びLCNECではRBまたはp16の発現喪失によって、肺小細胞癌ではRBの発現喪失によって、すべての腫瘍で異常を来していることが明らかになった。また、RBおよびp16の免疫組織化学染色は両腫瘍の鑑別診断上有用と考えられた。
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