研究概要 |
肺線維症における血管病態は長い間不明確であったが、我々は特発性肺線維症患者の胸腔鏡下生検肺を対象として、肺線維症における血管新生が二相性であることを示した。すなわち、肺胞壁中にしめる毛細血管内皮細胞の血管密度(面積比)は、早期には著しく増加するものの、線維化が進むにつれて減少し、後期にいたってはむしろ正常肺におけるよりも低くなる。これらの著しく増加した肺胞毛細血管内皮細胞からはアンジオテンシン転換酵素(ACE)が高濃度発現されていることを免疫組織染色にて示されたことから、アンジオテンシンIIの肺線維症の病態への関与が推察された。我々は、マウスブレオマイシン肺による肺線維症実験モデルを用いて、アンジオテンシンII受容体(AT1R)拮抗剤(losartan)の効果を肺乾燥重量あたりのhydroxyproline量と病理所見から線維化抑制の程度を評価した。その結果、10mg/kg/dayでは病理所見からある程度の線維化抑制は示されたものの著明ではなかったが、20mg/kg/dayでhydroxyproline量を統計学的に有為に抑制した(P=0.0244)。さらに血管新生抑制剤(TNP470,30mg/kg)を同肺線維症モデルに対して、その前期、中期、後期の三期に分けて投与を行った。その結果ブレオマイシン投与後28日目の屠殺時にいたる前に死亡したのは、ブレオマイシン投与直後に投与した群が70%と最も高率で(10匹中7匹)、中期後期はそれぞれ20%、25%であった。中期に投与した群では線維化が著明に亢進おり、hydroxyproline含有量も増加していた(P<0.05)。
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