研究概要 |
本研究はマウス肺癌細胞Lewis lung carcinoma(LLC)にヒトIL-1β遺伝子を導入し(LLC/IL-1β)、in vivoにおける固形腫瘍への増殖への影響を、炎症および癌-間質相互作用から解析するものである。 平成11年度研究成果:LLC/IL-1β細胞はin vivoで腫瘍の増殖が促進され、その機序として血管新生が考えられた。LLC/IL-1β細胞から、VEGF,MIP-2などの血管新生誘導因子の過剰分泌が認められた。 平成12年度は主要な血管新生誘導因子である肝細胞増殖因子(HGF)に焦点を絞り以下の事実を明らかにした。 1.LLC/IL-1β腫瘍に含まれるHGF濃度はコントロールに比べて4倍と有意に高値を示した。 2.HGFは主に腫瘍の間質を構成する線維芽細胞から分泌されていることがin situ hybridizationで確認された。 3.抗血管新生薬であるTNP-470を使うことにより血管新生を抑制すると腫瘍の増殖が抑制されることが示された。 4.HGFのアンタゴニストであるHGF/NK4遺伝子発現アデノウイルスベクターをLLC/IL-1β腫瘍に導入することにより腫瘍の増殖を抑制することが明らかとなった。 LLC/IL-1β細胞は腫瘍細胞自身がまた周囲の間質細胞働きかけ、血管新生因子の分泌を促し、腫瘍の増殖を促進させることが判明した。また、抗血管新生療法が固形腫瘍の治療に有用であることが判明した。ヒトの腫瘍を想定した場合、炎症により炎症細胞から、また腫瘍細胞自身からIL-1βなどの炎症性サイトカインが分泌されることにより血管新生が誘導され、結果として固形腫瘍の増殖が促進されることが考えられる
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