研究概要 |
肺癌の発生初期段階におけるhnRNP A2/B1蛋白の発現の生物学的意義を明らかにし、肺癌の臨床への応用に向けての意義を築くことを目的として、以下の研究をおこなった。 1)A2/B1蛋白の各アイソフォーム蛋白の発現様式を解析するため、これまで作成した抗体であるDP-3,2B2に加えて、A2蛋白を特異的に認識する新たなモノクローナル抗体4G8を作成した。 2)上記の三種類のモノクローナル抗体を用いて、ヒト正常気管支上皮培養細胞と肺癌および肺以外の臓器由来の培養細胞を対象として、A2/B1蛋白の各アイソフォームの発現量をWestern blotting法により検討した。その結果従来から報告されているように肺癌での発現同様、肺癌以外の臓器由来の培養細胞においてもA2/B1蛋白が発現していることをはじめて明らかにした。また正常気管支上皮培養細胞においてもA2/B1蛋白の発現が確認されたが、量的な比較では癌細胞での結果に比較すると発現の程度は明らかに少ないということが判明した。 3)細胞内でのA2/B1蛋白の発現様式を蛍光抗体法により検討した結果、上記培養細胞ではA2/B1蛋白は核に発現しており、その発現パターンは由来する臓器による異同はみられず、肺癌では細胞質に発現するとする従前の報告とは異なる結果が得られた。 4)細胞外への分泌により腫瘍マーカーとしての応用が可能か否かを明らかにするために、培養細胞上清、培養細胞を抗腫瘍薬で障害した際の細胞外への逸脱について、それら検体を濃縮しWestern blotting法により検討を加えたが、同法を用いた検討では、A2/B1蛋白の各アイソフォーム蛋白はいずれも培養上清中には確認されなかった。
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