これまでに、呼吸器疾患におけるブラジキニンB_1受容体の役割について基礎的検討および臨床研究を以下の如く行った。1)インターロイキン(IL)-1β刺激によるヒト肺繊維芽細胞株IMR-90におけるB_1受容体発現および同受容体遺伝子発現の検討。2)B_1受容体刺激および酸化的ストレス負荷によるIMR-90細胞の活性化の検討。3)本学IRBの承認を得て、検査あるいは治療のために手術により摘出された各種肺疾患肺組織のB_1受容体遺伝子発現について検討を行った。これまでに得られた結果では、1)B_1受容体mRNA発現量はIL-1β刺激後1〜2時間で最大となりコントロールに比し10倍程度まで増加した。[^3H]-des-Arg^<10>-kallidinのIMR-90細胞への特異的結合量はIL-1β刺激後2時間で最大となり、受容体数は約2倍に増加した。なお、解離定数は約1nMで変化を認めなかった。2)B_1受容体アゴニストdes-Arg^<10>-kallidin刺激および酸化的ストレス4-hydroxy-2-nonenal刺激はIMR-90細胞からのフィブロネクチン産生を増加させ、同細胞活性化におけるB_1受容体を介する活性化機構と酸化的ストレスを介する活性化機構の存在が確認された。現在、両経路の接点にあると思われるチロシンキナーゼ型受容体の分子生物学的役割についても検討中である。3)興味あることに、間質性肺炎患者の肺組織中B_1受容体遺伝子発現量は健常部肺組織に比して減弱しており、間質性肺炎におけるB_1受容体の変様が同疾患病態に関与することが示唆され、炎症性肺疾患におけるB_1受容体の役割について今後さらに検討する必要がある。
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