研究概要 |
近年、アレルギー性気道炎症の重要なエフェクター細胞である好酸球の分化及び活性化にはIL-5が重要であることが明らかにされた。本研究はIL-5による好酸球活性化機構を明らかにし、アレルギー性気道炎症を好酸球特異的に不活化し制御するするために、IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子を単離することを研究目的とした。IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子の単離は、サブトラクション法とPCRを組み合わせたRepresentational Difference Analysis(RDA)法を用いて解析した。その結果、Bcl-XやCIS等、発現が予測されたいくつかの既知遺伝子に加えて、IL-5により好酸球に発現、誘導される新規遺伝子(ESTを含む)が8個単離され、その全長cDNAの単離作業中である。そして少なくともこれらの半数以上の遺伝子は、ノザン法にてもIL-5依存的に発現誘導されることを確認した。さらにIL-5依存的発現が強い2つの遺伝子についてはプロモーター領域を単離し、現在、その発現制御機構の解析を行っている。そしてこれらの解析により、好酸球におけるIL-5依存的な遺伝子発現制御機構を明らかにできると考える。またこれらの知見を応用し、好酸球特異的な不活化によるアレルギー性気道炎症の制御を目指したい。 また上記実験と平行してIL-5シグナルの下流に位置するSignal transducers and activators of transcription 5(Stat5)のアレルギー性気道炎症における役割をStat5a欠損マウス及びStat5b欠損マウスを用いて解析した。そしてStat5a欠損マウス及びStat5b欠損マウスではアレルギー性炎症における抗原誘発気道好酸球浸潤が著明に低下しており、その原因の一つとしてこれらのマウスでは、IL-5投与による好酸球造血が低下していることを見出した。したがって、Stat5a及びStat5bは、アレルギー性好酸球性炎症の惹起に必須であることを明らかにした(Blood 95:1370,2000)。
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