研究概要 |
平成12年度は、内因性ステロイドと喫煙の関連、及び内因性ステロイドの肺局所での調節機構に関して検討した。 まず、喫煙刺激による肺細胞傷害に対し、内因性ステロイドの及ぼす影響に関して検討した。抗炎症作用を持つdexamethasone(Dex)、及びアンチオキシダント作用をもつdehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)を、喫煙抽出物質と共にA549細胞に添加し、48時間後に、MTT法によりviabilityを評価し、またHoechst33342/ethidium bromide染色の後、蛍光顕微鏡下に細胞形態を観察した。次に、内因性ステロイドの肺局所での調節機構に関して、DEHA-Sからdehydroepiandrosteroneへの変換酵素であるsteroid sulfatase(STS)の発現を検討した。A549細胞に、炎症性サイトカイン、成長因子、喫煙抽出物質を添加し、9時間後のRNA発現をRT-competitive PCR法で評価した。 喫煙抽出物質は、濃度依存性にA549細胞のviabilityを低下させ、10%以上の高濃度ではnecrosis、5%以下の低濃度ではapoptosisを引き起こした。しかし、DHEA,Dexいずれも、喫煙抽出物質による細胞死を抑制し得なかった。一方、喫煙抽出物質は、濃度依存性にA549細胞のSTS発現を増強した。また、炎症性サイトカインの一つであるIL-1βはA549におけるSTS発現を増強したが、INF-γ及びTGF-β,KGF,HGF等の成長因子は、何れもSTS発現に影響を及ぼさなかった。 喫煙刺激により、高濃度では細胞傷害がみられ、この細胞傷害と炎症の関連は低いことが示唆された。一方低濃度では、内因性ステロイドの代謝が促進され、炎症の促進との関連が示唆された。
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