研究概要 |
【目的】肺局所での内因性ステロイドの調節に関し、炎症細胞におけるsteroid sulfatase(STS)の制御、および肺胞上皮様細胞における喫煙により引き起こされるproteinase/antiproteinaseバランスの不均衡と内因性ステロイドの関連に関し検討した。 【方法】健常者、IPF, Sarcoidosis等の炎症性肺疾患患者由来のBALF-MacrophageのSTS発現を、RT-competitive PCR法で比較検討した。また肺胞II型上皮由来のA549細胞におけるMMP-3, TIMP-3発現に関し喫煙刺激及び内因性ステロイド添加の影響を同様にRT-competitive PCR法を用い検討した。なおCompetitive PCRにおいては、house-keeping geneであるGAPDHのmRNA発現量による補正、PCRにおけるmutant cDNAとの競合の2種の標準化を行った。 【結果】肺胞マクロファージは、恒常的にsteroid sulfataseを発現した。しかしながら、喫煙者と非喫煙者の間でその発現に優位な差はみられず、また炎症性肺疾患によるその発現の増強はみられなかった。喫煙抽出物質による刺激により、A549細胞のMMP-3,TIMP-3発現は優位に増強された。しかしながら、内因性ステロイドである、glucocorticoid(Dexamethasoneで代用)及びdehydroepiandrosteroneでは、この発現増強を抑制しえなかった。 【考察】Glucocorticoid, DHEAはそれぞれ抗炎症作用、antioxidantとしての作用を持つことが知られており、喫煙によるproteinase/antiproteinaseバランスの変調は一般的な炎症、oxidantによる傷害以外の機序によることが示唆された。
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