我々はこれまで、DPBをはじめとする慢性気道感染症におけるマクロライドの機序を解明するため、緑膿菌によるマウス慢性気道感染症モデルを創始し、病理学的、免疫学的病態を解析してきた。その結果、慢性期の成立がおよそ、3ヶ月後に起こることが推測された。本年度はこの結果をもとに、緑膿菌慢性気道感染症モデルにおけるマクロライド系抗菌薬のBALF中の菌数および好中球数、サイトカインへの影響を検討し、本系薬の慢性気道感染症における作用機序を検討した。 感染後90日目より、クラリスロマイシンを細菌学的効果を与えない10mg/kgを5%アラビアゴムに懸濁して経口的に投与した。コントロール群には5%アラビアゴム0.2mlを投与した。その結果、治療群において、先にTumor Necrosis Factor-α(TNFα)が抑制され、続いて菌数及び好中球数が抑制されてきていることが示唆された。つまり、まず生体側へ作用するものと推測された。また、これまでの多くの臨床での報告同じように、炎症性サイトカインであるIL-1βも低下させた。 一方、これまで我々はクラリスロマイシンはコントロール群に比べ、優位に肺内リンパ球、CD4/8比を回復させ、生体側に効果を及ぼしていることを報告してきた。近年、クラリスロマイシンに続く、同系抗菌薬の開発が相次いでおり、臨床の現場において、慢性気道感染症に対するその有用性が報告されている。今後、これらの抗菌薬との比較も含め、マクロライド系抗菌薬の作用機序について、さらなる解析をすすめていく予定である。
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