我々はこれまで、DPBをはじめとする慢性気道感染症におけるマクロライドの作用機序を解明するため、緑膿菌によるマウス慢性気道感染症モデルを創始し、病理学的、免疫学的病態を解析してきた。その結果、慢性期の成立がおよそ3ヶ月後に起こることが推測された。本研究ではこの結果をもとに、緑膿菌性慢性気道感染症モデルにおけるマクロライド系抗菌薬のBALF中の菌数および好中球数、サイトカインへの影響を検討し、本系薬の慢性気道感染症における作用機序を検討した。 感染後7日目よりクラリスロマイシンを細菌学的効果を与えない10mg/kgを経口的に投与した。その結果、治療群ではIL-1β、TNFαといった炎症性サイトカイン、、肺内リンパ球の抑制が起こり、肺内リンパ球CD4/8比は回復していた。また、慢性期が成立すると推測された90日目からの投与も行った。方法は急性期と同様に設定した。その結果、やはり炎症性サイトカイン、BALF中好中球が減少しおり、これまで臨床で報告されている結果と相違ない結果であった。 近年クラリスロマイシンに続く同系抗菌薬の開発が相次いでおり、なかでもケトライドはエリスロマイシン(EM)の化学構造を種々変換して合成された新規の抗菌薬であり、マクロライドと類似の効果が期待されている。本薬についても同様の検討を行った。その結果、ケトライド投与群では分離菌数は1×10^<2〜3>CFU/mlと低値し、他のマクロライド系抗菌薬に比較し、著明に菌数を低下させる作用があることが示唆された。その効果はケトライドのP.aeruginosa NUS10株に対するMIC(>400)やその構造から抗菌作用というよりもバイオフィルム形成抑制に影響を及ぼすことが予想された。今後、ケトライドがバイオフィルムの形成に関与するAlginate産生に及ぼす効果についても他剤と比較し、検討を加えて報告する予定である。
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