研究概要 |
肺サーファクタント蛋白質,SP-AとSP-Dは,C型コレクチン・サブグループに属し,特にSP-Aは補体C1qと構造上の相同性を有し,結合病原体をオプソニン化し,レセプターを介して肺胞マクロファージの貧食能を増強させる働きを有する。SP-AとSP-Dの一部は,肺局所から血液循環系へ移行し,特に間質性肺炎でその移行は顕著となること,それによってSP-AとSP-Dは肺胞内で減少することを明らかにした。この減少は結果的に本疾患の易感染性の一因になっていると推定される。また,慢性型特発性肺炎患者では,血中SP-D濃度が高い症例ほど,その後2-4年の経過において呼吸機能低下が顕著に現れる傾向があることを明らかにした。さらに,血中SP-A,SP-D濃度が共に高い症例ほど予後不良であること,死亡例の殆どがいわゆる「急性増悪」によることも明らかになった。急性増悪は慢性型特発性肺炎の予後を規定する最重要因子とされており,しばしばウイルス感染などの気道感染によって誘発される。血中SP-A,SP-D濃度が共に高い症例では,肺胞内の濃度が減少しており,これが原因となり,コレクチン関与の肺局所感染防御機能が低下して感染と急性増悪を生じ,予後不良因子となっている可能性が示唆された。
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