研究概要 |
平成12年度から13年度にかけてはSP-A, SP-D KOマウスの製作に努めながら、その前提となる傷害肺(acute lung injury)、喘息肺におけるサーファクタント異常の解析およびin vitroでの炎症細胞、気道上皮とサーファクタントの相互作用の検討に努めた。SP-D KOマウスについては残念ながら当学動物実験室の大修繕計画と重複し、いまだ途上であるが、傷害肺におけるサーファクタントの産生の異常を伴わないサーファクタント代謝異常の機序を解明し、また肺構造の修復に関与していると考えられるSP-Aが気道上皮への遊走活性をもっていることなどの新しい知見が得られた。喘息肺においても、質、量的な異常についての動物モデル、および気管支喘息患者における新知見(サーファクタント表面活性の低下、気道におけるSP-A, SP-Dなどの増加)やSP-Aが気道からも分泌されていることを示唆する所見およびSP-A、サーファクタント脂質が好酸球とお互いに関連し合ってサイトカイン産生の抑制や顆粒蛋白の遊離抑制、アポトーシスの誘導などを介してアレルギー性炎症を制御している可能性を示唆する所見が得られた。気管支喘息患者の気道粘膜生検像の免疫組織化学的検討から、SP-Aの発現の局在を検討した結果気道粘膜下腺に強く発現されることを見出した。また、肺胞上皮自身がIL-5, IL-16などを産生しアレルギー炎症の制御に自ら関わっていることを確認した。
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