ヒトゲノムDNA上に多数存在するプロウイルスである内在性レトロウイルス(ERV)は、間質性肺炎疾患の一群で肺胞マクロファージによってその関連蛋白が産生されていることを既に明らかとした。本研究では次の二つの観点につき解明を続けている。 1)間質性肺炎発症において、生体内で産生されたERV蛋白が生体のどの部位にどの様な反応を惹起するのか。 2)肺胞マクロファージ(PAM)におけるERV遺伝子活性化に寄与する因子を明らかにする。 1.肺組織でのクローン4-1Env蛋白分布の検討 現在、各種肺疾患症例のVATS検体や、手術・剖検時に得た凍結検体から薄切標本を作製し、クローン4-1Env蛋白抗体を用いた免疫染色により肺胞・間質におけるEnv蛋白の沈着・分布部位を検討している。実際にクローン4-1Env蛋白が組織沈着していることが確認できた例はまだ少ないため、一定の傾向を検出するには至っていない。平成12年度にも更に症例数を増やすことで、肺における反応の特徴を明らかとする予定である。 2.BAL液中、血清中の抗クローン4-1Env蛋白抗体の検出 精製クローン4-1Env蛋白を抗原としたウェスタンブロットにより、BAL液中、血清中の抗体の存在を検討している。更に症例数を増加することが必要であるが、肺局所で抗体の産生が確認できる症例では、全身的にも抗体が検出される傾向が認められている。 3.クローン4-1遺伝子における変異・多型性に関する検討 膨大なクローンに関してのシークエンスを要するため、現時点では十分な解析に至っていない。しかし、平成12年度の重点検討項目として、遺伝子変異の状況を明らかとしたいと考えている。
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