研究概要 |
本研究は、肺線維化との関連性が注目されているFas、Fas-Lを介するアポトーシスに焦点を当てFasからの細胞内シグナルを遺伝子工学的に操作しdominant negative状態を作り出し、肺線維化進展の抑制が可能か検討することを目的としている。平成12年度実施したものは下記の通りである。 1.変異FADD発現アデノウイルスベクター(Adv)の機能評価 平成11年度に相同遺伝子組み換えにより作成した変異FADD発現Advを使ってin vitroで発現の程度を検討した。変異FADD遺伝子導入細胞はA549細胞株(ヒト肺胞2型上皮細胞株)をつかって行った。遺伝子導入変異FADDの発現の発現は、遺伝子導入1週間目でも確認された。 2.ブレオマイシン(Bleo)肺線維症マウスに対する変異FADD発現Advによる肺線維症抑制効果の評価 a.気道への組み換えAdvの遺伝子導入効率の評価 E.coli LacZ遺伝子導入による評価 :10E9 pfu/100 ulを2回に分割して経気道的に吸入させ、4日後に組織科学的評価を行った結果、各肺のスライス面で約50%は気道上皮細胞へ、また15%は肺胞上皮細胞でE.coli LacZ遺伝子の発現を認めた。 b.変異FADD発現Adv投与後のBleo肺線維症進展抑制効果の評価(Bleo投与2日前に変異FADD発現Adv投与を行った)E.coli LacZ遺伝子導入実験で得られた結果を基に変異FADD発現Advの投与を行った。病理組織学的評価は、Bleo投与後2週間目に行った。未処置のコントロールに比べ線維化の部分は、少なかったが、気道部位によっては線維化の強い部分も認められた。客観的評価を行うためにハイドロキシプロリン量の測定を行った。その結果、変異FADD発現Adv投与群の方がハイドロキシプロリン量は少ない傾向にあった。 3.活性酸素による気道上皮細胞のアポトーシスとFas-FasL.TNF-TNF受容体(TNF-R)の関係の評価 a.培養肺胞上皮細胞へH2O2を濃度勾配的に添加しアポトーシスの誘導の有無を組織病理学的に評価した結果200uM以上で有意なアポトーシスを誘導できることが明らかになった。 b.H2O2添加培養肺胞上皮細胞のFas,TNF-Rの発現をFACSを使って評価した結果、Fasの発現については増強されたが、TNF-Rの発現についても増強効果は認められた。また、agonistic抗Fas抗体を加えアポトーシスの増強も認められた。変異FADD発現Advで処理後のH2O2添加培養肺胞上皮細胞におけるagonistic抗Fas抗体はアポトーシスを抑制する可能性が示された。
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