研究概要 |
本研究は、肺線維化との関連性が注目されているFas、Fas-Lを介するアポトーシスに焦点を当てFasからの細胞内シグナルを遺伝子工学的に操作しdominant negative状態を作り出し、肺線維化進展の抑制が可能か検討を行った。結果は、Fasを介する細胞内シグナルをdominat negativeにするために組み換えアデノウイルスベクター(Adv)を使って変異FADD遺伝子導入を行った細胞では、アポトーシスが抑制された。また、ブレオマイシン(Bleo)を使ったin vivoの実験でも不完全ではあるが、線維化の抑制傾向がみとめられた。経気道的遺伝子導入が肺全体へくまなく行き渡らせることが今後の課題である。具体的結果は以下の通りである。 1.変異FADD発現Advの作成と機能評価 相同遺伝子組み換えにより変異FADD発現Advを作成した。このベクターを使ったin vitroで発現の程度を検討した。変異FADD遺伝子導入細胞はA549細胞株(ヒト肺胞2型上皮細胞株)をつかって行い、遺伝子導入変異FADDの発現は、遺伝子導入1週間目でも確認された。 2.Bleo肺線維症マウスに対する変異FADDは発現Advによる肺線維症抑制効果の評価 正常マウスへBleoを経気道的に投与することで作成した肺線維症モデルを使用し以下の結果を得た。変異FADD発現AdvによるBleo肺線維症の進展抑制効果は、病理組織学的には遺伝子導入群の方が線維化は少ない傾向にあった。また、ハイドロキシプロリン量の測定でも変異FADD発現Adv投与群の方がハイドロキシプロリン量は少ない傾向にあった。 3.活性酸素による気道上皮細胞のアポトーシスとFas-FasL.TNF-TNF受容体関係の評価 培養肺胞上皮細胞へのH2O2投与では、200uM以上で有意なアポトーシスを誘導できた。この結果を基にH2O2添加培養肺胞上皮細胞のFas,TNF受容体の発現をFACSで評価した結果、Fas、TNF-受容体の発現の増強が認められた。また、agonistic抗Fas抗体を加えアポトーシスの増強も認められたが、変異FADD発現Advによってアポトーシスが抑制されることが明らかになった。
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