研究概要 |
平成11年度は、まず,FHIT遺伝子発現アデノウイルスベクター(AdCMV.FHIT)を作成した.すなわち,FHIT遺伝子のcDNAをアデノウイルス発現プラスミドpCMV.SV2+のmultiple cloning siteにサブクローニングした後,アデノウイルスtype5のゲノムを有するpJM17と共に293細胞にco-transfectした.AdCMV.FHITは単プラークより単離し,2回の塩化セシウム勾配内での超遠心で精製した後透析し,高純度のベクターを得た.次に,AdCMV.FHITのmRNAレベルでの機能を評価した.すなわち,FHIT遺伝子の異常が指摘されているヒト非小細胞肺癌株A549に0,10,20,50moiのAdCMV.FHITを感染させ,48時間培養後感染細胞から総RNAを抽出し,Northernブロッティング法により検討した.その結果,ベクターの容量依存性にFHITの発現が増強された.さらに,蛋白レベルでの発現産生をAp3Aを基質とした酵素反応によりHPLC法にて評価し,同様の結果を得た.その上で,AdCMV.FHITのA549細胞の増殖に対する影響をin vitroで検討した.その結果,AdCMV.FHITの容量依存性にA549細胞の増殖抑制効果を認めた(p<0.05). さらに、平成12年度は、in vitroでの実験結果を踏まえ,in vivoでのヌードマウス皮下腫瘍モデルでの抗腫瘍効果を検討した.すなわち、A549細胞(1x10^7細胞/100μl)を4-6週齢のBalb/c nu/nuマウス側腹部皮下に接種すると,約1週間で5mm大に腫瘍を形成する.この時点でAdCMV.FHIT(1x10^9PFU/100μl)またはコントロールを28G針とシリンジを用い腫瘍内に直接接種した.ウイルス感染後4-5週間まで,腫瘍径を2-3日毎にキャリパーを用い計測し,造腫瘍性をコントロール群と比較検討した.その結果、コントロールに比べAdCMV.FHIT感染群では,20日目に47%,24日目に51%の増殖抑制効果を認めた(p=0.023およびp=0.013)。 以上よりFHIT遺伝子導入は新たな肺癌遺伝子治療の有望な選択肢となりうると考えられた.
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