ヒト胆管癌細胞TK株はその培養上清中にCA19-9、CA50およびシアリルLe^x-1(SLX)抗原を多量に分泌するという特性を持つ.このTK株にIL-2及びB7-1遺伝子を単独/重複して導入したところin vitroでの細胞傷害効果とSCIDマウス移植腫瘍での拒絶が起こった.遺伝子導入細胞ではさらに細胞が本来産生していた糖鎖腫瘍マーカーの産生量が低下した.細胞膜表面に発現する糖鎖抗原、特にCA19-9およびSLXは血管内皮細胞への接着に関与するセレクチンファミリーのリガンド糖鎖として知られているため、これら糖鎖抗原産生量の低下と腫瘍拒絶には関連性が示唆される.また糖鎖は遺伝子の直接産物ではないため、癌化・転移に際し変化するのは、糖鎖合成に働く糖転位酵素や糖鎖の修飾酵素の活性変動に依るものとされている.この糖転移酵素のうちヒトα-1.3-フコース転移酵素(Fuc-T)遺伝子群は現在5種類がクローニングされており、特にFuc-TIII酵素はCA19-9およびSLX抗原の生体内合成に関与していることが近年証明された.遺伝子導入により引き起されたCA19-9/SLX産生量低下とFuc-Tとの関連を明らかにするため、平成11年度はまず各遺伝子導入細胞とwild type腫瘍細胞の培養上清と細胞破砕液をSDSで可溶化したのちポリアクリルアミド電気泳動と抗CA19-9抗体、抗SLX抗体および抗CA50抗体を用いたウエスタンブロッテイング法で産生腫瘍マーカーをタンパクレベルで比較解析した.またヒトFuc-TIII、Fuc-TVII酵素のオリゴヌクレオチドプライマーを作製しRT-PCR法で遺伝子導入細胞とwild type腫瘍細胞での各酵素の変化を検討中である.
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