研究概要 |
インフルエンザウイルス(influenza virus:IV)感染は気道傷害、気道炎症、を引き起こし、また、気管支喘息の症状を悪化させることことが知られている。この機序にIV感染によって誘導される気道上皮細胞からのサイトカイン産生が挙げられる。本年度はIV感染による気管支喘息の症状を悪化に注目し、好酸球の遊走活性を有するサイトカインであるRANTESに焦点を絞り、そのサイトカイン発現機構の一端を解明するために、mitogen-activated protein(MAP)kinase superfamilyを中心に細胞内シグナルを解析した。その結果、1)IV感染により気道上皮細胞に,extracellular signal regulated kinase(Erk),p38 MAP kinase,c-Jun-NH2-treminal kinase(JNK)のチロシンとスレオニンリン酸化および活性化を誘導した。2)SB203580(p38 MAP kinase特異的阻害薬),PD98059(Erk上流のMEK-1阻害薬),CEP-1347(JNK活性化阻害薬)は、それぞれIV感染により誘導されるp38 MAP kinase,Erk,JNKの活性を抑制した。3)SB203580およびCEP-1347は、IV感染により誘されるRANTES産生を容量依存性に部分的に抑制したが、PD98059は抑制しなかった。4)N-acetylcysteine(NAC)はIV感染によるRANTES産生を部分的に抑制したが、p38 MAP kinase,JNK活性は抑制しなかった。以上の成績は、IV感染による気道上皮細胞からのRANTES産生は少なくともp38 MAP kinaseとJNKを介することを示唆した。また、NACによって制御されるレドックス機構がp38 MAP kinase/JNK非依存性の経路を介してRANTES産生を制御することも示唆した。このような細胞内シグナルの解析と制御が、治療に結びつくことが期待される。
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