研究概要 |
肺移植と肺傷害における肺胞水分再吸収機序を研究した.まず,肺に対する手術侵襲が肺胞水分クリアランス機能とRT-PCR法で測定したαrENaCの発現への影響を検討した.その結果,手術侵襲後2週間は肺胞水分クリアランスは不変であるが,2,4週間目には肺胞水分クリアランスは亢進する.その機序を検討し,αrENaCの発現が亢進していること,ナトリウムチャンネルの機能亢進が阻害薬使用の結果確認されたことより,ナトリウムチャンネルを介する肺胞水分クリアランスの亢進が示唆された.また,分離採取された肺胞II型上皮細胞数が増加したことより,手術後残存肺では肺胞II型上皮細胞が過形成され,その結果肺胞水分クリアランスが亢進した可能性も示唆された.またこのモデルでのカテコールアミンの関与は否定された.以上の結果をJ Thorac Cardiovasc Surgに投稿し,平成14年に掲載される. 肺移植及び肺手術後肺傷害時には低酸素血症が発症するが,低酸素暴露により内因性カテコールアミンが分泌され,肺胞水分クリアランスを亢進させる機序を研究し,その結果を論文報告した(J Appl Physiol 2001).カテコールアミンのうちノルエピネフリンの関与が示唆され,これはヒトでの高地暴露における反応と一致するものであった.また,低酸素暴露による影響として摂食障害が関与するが,摂食障害により肺胞水分クリアランスは減少することが判明した.これは肺傷害患者での栄養補給の重要性に関連しており,新たな研究の必要性が示唆された. 肺胞水分クリアランスを促進することにより肺傷害における肺胞水腫は改善する.特にβ1及びβ2刺激薬は肺胞水分クリアランスを亢進する作用が強い.β交感神経刺激薬が肺胞水分クリアランスを亢進する機序,上皮細胞傷害とその修復過程における肺胞上皮細胞を介する肺胞水分クリアランス機能を総括し論文報告した(J Jpn Med Soc Biol Interface 2001).
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