研究概要 |
クララ細胞がシリカによる肺のリモデリングにいかに関与するか検討するため、クララ細胞除去マウスにシリカ吸入曝露を行い、肺組織における炎症・線維化関連遺伝子発現(matrix metalloproteinase(MMP),tissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP),chemokines,proinflammatory cytokine)の発現を検討した。 【方法】FVBnマウスにナフタレン300mg/kgを腹腔内注入し、クララ細胞除去マウスを作成し、20日間、クララ細胞が除去されていることを確認した。このクララ細胞除去マウス及びWild typeマウスにシリカを吸入曝露(Min-U-Sil,シリカ平均重量濃度97.1+9.5mg/m3,6時間連続曝露、最大2週間吸入曝露)を行い、1日、3日、1週間、2週間後に解剖し、右肺よりRNA抽出し、MMP-2,MMP-9,TNFa,IL-1,IL-6,CINC,MIP-2遺伝子をRT-PCRにて検討した。左肺は、パラホルムアルデヒドにて定圧固定し、MMP-2,9の免疫染色を行った。 【結果と新たな知見】MMP-2に関して、シリカ曝露によりクララ細胞除去及びWildマウスともに発現が亢進することも認められなかったが、クララ細胞除去マウスとWild typeマウス間の比較では、クララ細胞除去マウスのみシリカ曝露7日,14日目で遺伝子発現が亢進した。MMP-9においても、シリカ曝露によるクララ細胞除去及びWildマウスとも発現が亢進することは認められなかったが、クララ細胞除去マウスとWild typeマウス間の比較では、14日目において、シリカに曝露されたクララ細胞除去マウスのMMP-9遺伝子発現が有意に亢進した。これらの結果よりクララ細胞は、シリカ曝露において、MMPを介して炎症・線維化に抑制的作用をもつことが示唆された。また、TNFa,IL-1,IL-6,CINC,MIP-2に関して、クララ細胞除去マウスとWild typeマウス間で遺伝子発現に差を認めず、本実験において、クララ細胞はこれらのケモカインや炎症性サイトカインの発現制御に関与しないことが示唆された。
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