研究課題/領域番号 |
11670604
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研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
樋田 豊明 愛知県がんセンター, 研究所, 研究員 (80250249)
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研究分担者 |
高橋 隆 愛知県がんセンター, 超微形態学部, 部長 (50231395)
杉浦 孝彦 愛知県がんセンター, 研究所, 研究員 (50117826)
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キーワード | 肺癌 / cyclooxygenase2 / 予後因子 / 免疫染色 / 抗COX-2抗体 / 増殖抑制 / アポプトーシス / COX-2阻害剤 |
研究概要 |
肺癌においてプロスタグランジン生合成を司るcyclooxygenase2(COX-2)の過剰発現が、肺癌、特に肺腺癌の70%に検出されること、しばしば浸潤部位やリンパ節転移巣に強く発現されていること等を見出した。これらの知見を背景に、従来の化学療法剤の作用点とは異なる、このCOX-2を分子標的とする新しい治療法の導入について検討するため、本年度は、肺腺癌におけるCOX-2発現の臨床的意義の検討とともに、COX-2特異的阻害剤による肺癌の増殖抑制効果について検討した。愛知がんセンターで1986年1月より1990年12月に連続的に切除された130例の肺腺癌治癒切除術施行例を対象にCOX-2発現の予後因子としての有用性について、抗COX-2ポリクローナル抗体を用い、免疫組織染色を施行し詳細な検討を行った。その結果COX-2陽性症例は130例中93例、72%で認められ、陰性症例は37例、28%で認められた。COX-2発現と年令、性、病期、喫煙歴との間に関連性は認められなかった。全症例を対象にした生存曲線の解析では、COX-2陽性群で予後不良な傾向が見られたが、統計学的に有意差は見られなかった。しかし病期I期症例81例を対象にした解析では、COX-2陽性群で統計学的に有意に生存期間の短縮が認められ、COX-2の高発現は病期I期症例における予後因子として有用である可能性が示された。COX-2特異的阻害剤による肺癌の増殖抑制効果についての検討では、COX-2を種々の程度発現している肺癌細胞株、正常気管支上皮細胞株、正常肺胞上皮細胞株を用いMTT assayにより検討した。臨床的到達可能濃度域のCOX-2阻害剤により、選択性を持った増殖抑制とアポプトーシスの誘導がCOX-2発現株で得られた。現在、化学療法剤との併用効果についての検討をin vitro、in vivoにおいて施行中であり、副作用の軽微なCOX-2特異的阻害剤の臨床導入へ向け検討を続けている。
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