圧触覚刺激装置を開発し、四肢のメカノレセプター刺激による神経電位記録(CSAP)が実際に記録できるかどうかを検定し、分析した。特に、指尖部、近位指節部、手掌刺激によるCSAP記録を試み、圧触覚刺激装置に反応するレセプターの種類を検討した。第III指指尖部、近位指節部、および母指球部に対し100μm/msおよび400μm/msのプローベ速度で触覚刺激を与え、指尖部に対する電気刺激で誘発されるCSAPも記録して、触覚CSAPと比較した。記録は電気刺激によって針先を神経近傍にガイドしたnear nerve電極を用いて250〜500回加算した。記録されたCSAPは著しく多相性で、電気刺激CSAPの10%程度のしんぷくであった。SCVは電気刺激と400μm/ms触覚刺激との間で全く差がなく、100μm/ms刺激では約15%遅延した。指尖刺激でのCSAP振幅は400μm/msで1〜2μV、100μm/msで0.3〜0.4μV、母指球刺激においては400μm/msで20〜30%の、100μm/msで50%以上の電位振幅・面積の減少がみられた。 Microneurographyによる研究から、Meisnner小体は指尖に高密度に分布することが知られている。一方、Pacini小体は指と手掌に均一に分布する。本触覚刺激装置によるCSAP振幅の分析から、100μm/msのプローベ速度では主に表在受容器であるMeissner小体が反応し、400μm/msでは一部のMeissner小体に加え、深部受容器であるPacini小体が主に反応するものと推定された。また、伝導速度の違いから、前者では電気刺激に反応する最大直径有髄線維が、後者ではやや径の小さい有髄線維がその伝導経路を形成していると推察される。本刺激装置を用いることによって、皮下に存在するメカノレセプター由来の電位とその伝導経路を臨床的に検討できることが可能になった。
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