研究概要 |
本研究では、脳梗塞における神経細胞死の分子機序を明らかにし脳保護薬を開発を目的とし、特に、cystein proteaseであるcaspaseの活性化によって誘導されるapoptosisを抑制することの治療的解明を目的としている。(1)脳梗塞モデル・ラットを用い、Fas,Fas ligand, caspase 3, caspase 8, TNFαの発現と経時的に検討したが、一定の結果が得られず、さらに検討を続けている。(2)FK506結合蛋白-12(FKBP12)は細胞内calcium channelを調整する蛋白で、免疫組織化学とwestern blotでその局在と脳虚血後の変化を検討した。FKBP12は神経細胞に存在し、虚血中心部では虚血後早期から減少したが、周辺部では発現が増加した。炎症細胞にFKBP12が発現した。(3)microglial response factor-1(MRF-1)はミクログリアの活性化に伴って発現される遺伝子で、脳虚血においても炎症細胞(ミクログリア、マクロファージ)に発現が増加した。(4)macrophage migration inhibitory factor(MIF)はサイトカインのひとつで正常では神経細胞に発現しているが、虚血後早期から低下し、一方で梗塞巣内のマクロファージに強く発現した。(5)虚血病巣に出現する炎症細胞にはproliferating cell nuclear antigen(PCNA)が強く発現していた。以上のことから、これらの因子は虚血性神経細胞障害のmediatorとして重要な役割を果たしていることが明らかにされた。
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