研究概要 |
家族性筋萎縮性側索硬化症患者に認められる四種類の変異型superoxide dismutase1(SOD1)遺伝子(G37R, G85R, G93A, S134N)および野生型SOD1遺伝子をそれぞれプロモーター活性強度の異なる二種類の発現ベクター(pcDNA3,pEF-B0S)にサブクローニングし、COS7細胞に導入した。約48時間後、発現効果の高いpEF-BOSを用いた系において核周囲に変異型SOD1蛋白質による凝集塊形成が認められた。この凝集塊は小胞体マーカーの局在と一致し、変異型SOD1の小胞体内での蓄積が示唆された。ゴルジ体の局在に変化は認められなかった。凝集塊形成に伴い、ミトコンドリアは核周囲に集簇し、一部は膨化像を呈していた。また抗チューブリン抗体陽性像も核周囲に集簇しており、微小管の障害によりミトコンドリアの細胞内局在に変化が生じたものと考えられた。一方、発現効率の低いpcDNA3の系では変異型SOD1の凝集塊は形成されなかったが、プロテアソーム阻害剤であるラクタシスチンの添加により、核周囲に凝集塊が形成され、小胞体マーカーの局在と一致した。上記の変化は、野生型SOD1遺伝子(pcDNA3,pEFBOS)を導入したCOS7細胞では認められなかった。 [結論]変異型SOD1はプロテアソームによる分解処理能力を超えて産生された場合に、小胞体内に凝集塊として蓄積することが示唆された。さらにSOD1の変異は、小胞体における蛋白質の品質管理機構およびユビキチン・プロテアソーム分解系と密接に関連し、凝集物形成に伴いミトコンドリアや他の細胞機能障害を多元的に誘発する可能性が示唆された。
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