研究概要 |
(1)ヒト骨格筋におけるフリーラジカルおよびアポトーシス関連物質の局在 ミトコンドリア脳筋症(Mt脳筋症)、その他の筋疾患の生検標本を用いてNOS,SOD,Fas,Bcl-2,Bax,Apaf-1,caspase3,8,9などの抗体による免役組織化学を行った.特に、Mt脳筋症のRagged-red fibers(RRF)ではBax,Apaf-1,caspase3,8,9は筋鞘膜直下に強陽性に染色され、筋線維内は顆粒状・びまん性に染色された.caspase3,9は血管内皮に弱く染色された.caspase8では全例の細胞核が陽性に染色された.Fas,Fas-L,Apaf-1,Bcl-2はMt脳筋症のRRFにおいては、caspase3,8,9より染色の程度は弱いが同様に染色された.Mt脳筋症のRRFにおいてBax,Apaf-1,caspase3,9の発現がみられた.これはミトコンドリア膜上のBaxが活性化され細胞質内で活性型Apaf-1が発現し活性型caspase9を誘導しcaspase3を活性化するミトコンドリアを介したアポトーシス伝達経路の関与を示唆する.RRFでFas,Fas-L,caspase3,8が発現しており、Fas/Fas-Lを介したcaspase8の活性化によるcaspase3を活性化する経路の存在も示唆された. (2)実験的筋崩壊・再生モデルを用いたジストロフィン,NOS,SODの局在の検討 カルジオトキシンを用いたラットの実験的骨格筋壊死再生過程におけるdystrophin(DYS),αsarcoglycan(αSG),α1 syntrophin(α1S),神経型NOS(nNOS)の動態を免役組織化学的に検討した.再生筋の筋形質膜においてDYS,αSGが最も早く3日後に形態学的に発現し、ついでα1Sが5日後に、nNOSが最も遅く10日後に発現した.発現開始時期および全ての再生線維が陽性化する時期を検討すると、DYS,αSG,α1Sは筋線維のtype1,type2への分化前に発現が終了したが、nNOSはtype1,type2への分化とともに発現する特徴を認め、再生筋線維のタイプ分化と関連していること見いだした.
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