研究概要 |
(1)糖尿病ラット末梢神経の虚血再環流モデルにおけるフリーラジカルの影響とその機序 一般に神経系の虚血再環流において酸化ストレスによりフリーラジカルが発生し,その結果神経系に傷害を起こす.糖尿病の末梢神経系における酸化ストレスによる末梢神経障害の機序を明らかとするため実験的糖尿病ラット末梢神経組織における形態学的検討およびフリーラジカル産生物であるthiobarituric acid-reactive substances(TBARS)を測定をおこなった.糖尿病ラットの虚血再環流モデルでは正常ラットに比して形態学的には初期のミエリンの崩壊を示唆する"loose myelin"と軸索変性の初期変化を示唆する"dark axon"の所見が強くみられた.また,浸潤細胞の免疫組織染色では糖尿病ラットにCD4,CD8,ED1陽性細胞の浸潤がみられた.さらに,TBARS測定でも糖尿病ラットでは正常ラットに比し優位に増加していた.これらを総合すると糖尿病ラットでは虚血再環流における酸化ストレスをより強くうけ,それらが糖尿病性末梢神経障害の1つの要因となると考えられた. (2)実験的筋崩壊・再生モデルを用いたnNOSおよびジストロフィン結合タンパク質の発現 筋の壊死,変性後の筋再生メカニズムの解析のため実験的筋壊死後の再生過程におけるdystrophin,dystrophin結合タンパク質およびnNOSの発現を免疫組織化学染色およびWestern blotにより検討した.Cardiotoxin筋注後のラット前脛骨筋再生過程ではβ-dystroglycan>α sacoglycan,dystrophin,α1-syntrophin,α-dystrobrevin-1>nNOSの順に再発現する傾向にあった.以上より,筋細胞構造の支持を役割とするβ-dystroglycan,α-sacoglycan,dystrophinは,シグナル伝達を役割とするα1-syntrophin,α-dystrobrevin-1,nNOSよりも再発現が早い可能性が考えられた.nNOSの発現は免疫組織化学染色とATPase反応の比較から正常骨格筋においてtype2B線維の筋鞘膜に優位であり,再生過程においても筋線維type分化に依存しtype2B線維に優位に発現すると考えられた.
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